全国学力調査は誰のためのもの?〜2019年度の結果が公表〜

いつも兵庫子ども支援団体の活動をご支援していただきありがとうございます。

さて本日、今年度行われた全国学力テストの結果が公表されました。今回はそれを受けて、サポーター限定投稿の記事として内容を見ていこうと思います。

学力調査の概要

今年度の全国学力調査は4月18日に行われ、小学6年生・中学3年生の子どもたち合計約200万人が参加しました。これまでは、知識などを問うA問題と活用能力を問うB問題の2種類が国語と算数(数学)にはあったのですが、今回のテストからA問題とB問題がそれぞれ統合して実施されています。

これは、2020年度(中学校は2021年度)より全面実施される新学習指導要領に合わせた変更だと考えられます。新学習指導要領では、「知識・理解」「学びに向かう人間性等」「思考力、判断力、表現力等」をバランスよく育むことが求められているため、それぞれ分けて出題ではなく、一つにまとめて出題することに至ったのだと思われます。

さらに、中学3年生では初めて「英語」もテストが行われています。英語のテストでは「話す」「聞く」「書く」「読む」全ての分野について調査が行われました。

学力調査の結果

都道府県別の結果としては、国語(小学校)では秋田県が、算数(小学校)では石川県が最も正答率が高く70%を超えています。国語(中学校)でも秋田県、数学(中学校)では福井県、英語でも福井県が最も正答率が高くなっていました。ちなみに、兵庫県は国語(小学校)のみ全国平均より下で、それ以外の教科では全国平均を少し上回る結果でした。

都道府県別の正答率


正答率ベースでは例年と同じくらいの結果となっているように思えます。内容をそれぞれ見ていくと、共通の課題として「理由や考え(なぜそうなるか)を文章で記述する」ことが挙げられます。学力テストではもちろんですが、OECDの調査などでも日本の子どもたちにとって課題があるのは思考力や表現力と言われています。この部分を今後高めていく必要があると思われます。

英語の結果から

今年初めて調査をした英語の結果から言えることは「まだまだである」ということです。「読む」「話す」「聞く」「書く」それぞれに課題がたくさんあります。特に「話す」設問に関しては正答率が2%にも満たないものもあったそうです。ただ、「文法的」「構造的」に正しくないと正答とは判断されず、後述していますが「文法的には誤りだが、伝えようとした」子どももある一定数いたと見られています。

今回テストを受けた中学3年生の子どもたちは、小学校から英語教育を受けてきた子たちになります。当時の小学校の外国語活動は「英語に親しむ」ことなどが目的だったので何とも言えませんが、小学校の外国語活動が良い影響を及ばしていたかは今後検証していく必要があります。ただ、「わからないからしない」という子どもは少なく「分からないけれど、何とか伝えよう・答えよう」としている子どもの割合は高く、粘り強く取り組んでいたようです。

全国学力調査は誰のためのもの?

結果が公表された7月31日、ネットニュースを見ているとこんな題の記事が書かれていました。

小中学生が受ける全国学力調査の大阪市の平均正答率が、一部の教科で全国20の政令指定市の最下位になったことを受け、前市長の吉村洋文・大阪府知事は31日、ボーナスを全額返上する意向を示した。<span class="su-quote-cite"><a href="https://www.asahi.com/articles/ASM705RPRM70PTIL01C.html" target="_blank">学力調査「指定市で最下位」 大阪府知事がボーナス返上(朝日新聞デジタル)</a></span>

最下位のテスト(教科)があったから、責任をとってボーナスを返上するという記事です。大阪市では独自の学力テストを行い、その結果により評価等に繋げるという報道も以前ありました。賛否両論あるとは思いますが、個人的にはどうだろうか…と思っています。

そもそも全国学力調査を「なぜ」実施しているのでしょうか。

文部科学省のホームページにはこのように書かれていました。

  • 義務教育の機会均等とその水準の維持向上の観点から、全国的な児童生徒の学力や学習状況を把握・分析し、教育施策の成果と課題を検証し、その改善を図る。
  • 学校における児童生徒への教育指導の充実や学習状況の改善等に役立てる。

国としては、「教育施策の課題検証」や「教育施策の改善」を行うため、学校や地方公共団体(都道府県・市町村)としては「教育指導充実」や「学習状況の改善」を行うためと書かれています。要は子どもや教師を評価するためでもなく、「現状」を知り「改善」していくためのものということです。

学力調査や学力に関するテストを評価に反映させると、どんなことが起きるかと言うと受験勉強などと同じで「対策」を学校でしようと思う人が出てくるかもしれません。実際に、「2016年に行われた全国学力調査で、前年度の2月から良い成績を取らせるために、過去問を行なっていた」というニュース(外部リンク)もありました。

「対策」をするというのは、出題・傾向パターンを覚えることに近いと思っています。これは、文部科学省が求める「生きる力」を育むことに逆行しているのではないでしょうか。「生きる力」は、大まかに言うと「これからの社会、大きく変化し、予測できないことも多々ある中で、そのような社会を生きていける力を身につけさせる」ことを目的としています。つまり、自分で考え、判断できる子どもたちに育って欲しいということです。

実施目的やこのようなことが起きる可能性を踏まえると「評価」に使うのは、どうだろうかと思う次第です。

学力調査の結果が低いと出てきたならば、それなりの”理由”があると思います。地方公共団体としては、その理由を探り、改善していくべきなのではないでしょうか。例えば、「質問紙調査で家庭学習できる環境にない」ということが分かれば、学習できる場づくりに取り組むことができます。他にも、「知識はあるが、活用できていない」「考えることができていない」という結果が出れば、1年生から(※発達段階は考慮していません)継続的に考える学習に取り組ませたり、思考の手助けとなるような教具やデジタル教材を導入したりすることができます。このような「改善」のために、テスト結果を活用していって欲しいです。

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